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ライカIIIfの距離計縦ずれ2016年06月03日

前回)からの続きです。

今回、分解と再組み立てに挑戦した「ライカIIIf」は、
部品の欠落や破損はなさそうなので、すべての部品を清掃して組み立て、
そして、しかるべき調整をすれば正常に稼働するはずです。
ところが、その簡単なはずの事が、すんなりいかないのが世の常。
まずぶち当たった壁が「距離計」でした。

去年、別記事の「ライカIIf」で取り上げた事がありましたが、
バルナックライカのファインダーは、距離計が別になっています。
バルナックライカのファインダー

今回の分解でこの仕組みも理解できました。
02
この写真でシャーシ上部の手前の黒いブロックはプリズムです。
これで50mm用の視野ファインダーの光軸を左にずらして、
距離計用ファインダーと近づけているのですね。
そうせずに覗き窓が離れたままだと、
あっちを見、こっちを見になるので、さすがに撮影するのに不便です。
黒いブロックの向こう側に距離計が付いています。
これを次のように本体から外して、手の届く範囲は清掃しました。
03
ファインダーがクリアになると、気持ち良く撮影できます。

ところが、仮組み立ての段階でファインダーを覗いたところ、
クリアにはなったものの、なぜか距離計の二重像が縦にずれていました。
「あれ?最初からこんなにずれていたかな?
まあ、縦ずれ調整は以前にやったことがあるから大丈夫。
対物側のプリズムガラスを、ドライバーで左右に回して調整すれば良いのだ」
と、次の写真のように経験済みの作業を今回もやってみましたが、
それでは全然調整しきれないほどのずれでした。
04
距離計をシャーシに取り付けるときにずれたのでしょうか。
精密機械だから、ちょっとでも歪んで取り付けると、
大きなズレに結びつくのかもしれません。
などと考えながら色々チェックしてもラチがあかず。

ギブアップして二、三日ほかっておきました。
それでも分解したままの部品は場所をとるし邪魔なので、
ダメなままでも、一応きれいにして組み立てておこう、
気が向いたら、後日また挑戦しようと思いました。
そして、距離計の中のハーフミラー(次の写真の白い点線部分)、
05
これを掃除するつもりで綿棒を、この写真のように突っ込んだら、
何か「カチャ!」と音がしました。
その瞬間、「これか!」と原因を発見。
分解と組み立ての途中で、ハーフミラーが本来の位置からずれてしまったようです。
「これを直せば大丈夫そうだな」と期待し、
ハーフミラーの端部に瞬間接着剤を点付けし、
本来の位置と思われるところに押し込み接着しました。

原因がわかり、対策を講じればあとは順調にいきます。
次のように壁に目印を貼り付け、三脚にセットしたカメラの距離計を覗きました。
06
そして、目印の二つの像が水平に並ぶように調整しました。
07

しかし、机の引き出しから適当に見つけたこの目印、
"Multi Media Card 128MB"って書いてあります。
容量は、現在普通に売られている128GBのカードの千分の一ですね。
数年前は現役だったのに、今は無価値で当然出番なし。
それを考えると、
60年前に製造された「ライカIIIf」が今も生き残っているのは大したものです。

続く

ライカIIIfの巻上げを軽快に2016年06月04日

前回)からの続きです。

バルナックライカには、フィルム巻上げレバーがありません。
巻上げノブを二本の指でつまみ、しこしこ巻上げる方式です。
ところが良く整備された個体では、僅かな力で巻上げることができるので、
人差し指の腹をノブに押し当てて引くだけで回すことができます。
(巻上げ軸に横向きの力が加わるので、機構的に望ましいやり方ではないが)

今回の個体は、分解前はそれができませんでした。
不調なシャッターの幕を無理に走らせるために、
幕のテンションを強くしすぎていたためと思われます。
分解して各部清掃後、テンションを適度に抑えて調整した状態では、
次の動画のように、軽快な動作になりましたよ。

これでこそライカですね。

続く

ライカセルフタイマーとんでも修理2016年06月05日

前回)からの続きです。

古いカメラではセルフタイマーが効かないことがよくあります。
今回の"ライカIIIf"もそうでしたので、
メカニズムのお勉強も兼ねて「修理?」に取り組みました。
バルナックライカのセルフタイマー
この写真のようにセルフタイマーレバーを下方に回した状態で、
中央ネジ左側のボタンを押すと、次の写真で、
タイマー本体の作動レバーが押し下げられ、タイマーが作動し始めます。
02
タイマー本体の裏側を見てみるとこうです。
03
動力となるバネが、回転軸に巻き付いているのが見えます。
その回転軸に取り付けられた黒色のカムが、
タイマー作動と同時にこの写真で左方向に回転し始めます。

その先どうなるかを学ぶには、
次の写真の白枠部分をよく観察する必要がありました。
04
拡大するとこうです。
拡大
先ほどのタイマーのカムが爪1を右に動かし、
爪1と一体の爪2がシャッター軸連動ビスを右に動かします。
すると、筒の中のシャッター軸(赤点線)が右(カメラ下部方向)へ動き、
これは即ち、シャッターボタンを押し下げたのと同じ働きをします。

そして今回の不調タイマーでは、
この連動機構が働いてシャッターが切れる前に、
ゼンマイバネの力が弱くなってしまう感じでした。
そこで思いついた「とんでも」修理。
先ほどの拡大写真の「爪1」をペンチでつかんで、
1mm程度カム側へ強制的に変形させました。
その意図は、センマイバネの力が強いうちに、
シャッター軸にその力を伝えてしまおうという訳です。

その結果、次の動画のようになりました。
シャッターレリーズのタイミングが、
正常な個体よりちょっと早めですが一応使えるようになりました。

私と誰かのツーショット記念写真を、
今後このライカで撮ることでもあれば、タイマーを使ってみようと思います。
三脚立てたりして、そうなると本当に数十年前の光景ですね。

続く

ライカのシャッター感2016年06月06日

前回)からの続きです。

"ライカIIIf"を分解してみて改めて理解したのは、
このシャッター機構が、そのまま"ニコンF"にも引き継がれていることです。
だから、ライカを分解中に撮った記録写真に、
ニコンFのシャッター機構の説明文を添えれば、
それで、フォーカルプレーン式シャッターメカニズムの解説になります。

試しに『カメラの修理&メンテナンス』(大関通夫氏著)から、
ニコンFのレリーズ機構の説明文を引用するとこうです。
「レリーズボタンを押すとスプロケット軸が下がり、下部の押しボタンクラッチが外れる。これはシャッターをフィルム送り機構から切り離し、走行可能にするためである。更に押し込まれると、底面のスプロケット軸戻り板ばねが下がって、その一部で先幕第1かぎを押し外す」
私は、この説明文を読みながら、以下の写真が示す部分の動作を観察して、
ライカのシャッターのメカニズムを理解しました。
バルナックライカのシャッター感

02

03

蛇足ながら失敗談をひとつ。
前回のセルフタイマーの修理に際して、最初はバカな修理法を試みました。
それは、弱くなったタイマー作動バネの力でもシャッターが確実に切れるように、
上記写真の「先幕第1かぎ」を強制的にペンチで変形させたのです
(かぎの先端くちばし部分が、溝にそれほど深く入り込まないようにしました)
そうすることによって、確かにセルフタイマーは機能するようになりましたが、
今度は普通にシャッターボタンを押した時のフィーリングが、
とても悪くなってしまいました。
多分、「クラッチ」が外れるのと「先幕第1かぎ」が外れるタイミング、
これは実に微妙な調整がなされているものなのでしょう。
これが狂うと、ライカの絶妙なシャッター感が失われてしまうようです。
このバカな試みは直ちに中止し、元に戻しました。
戻ったから良かったようなもの、戻らなかったら非常に後悔したと思います。

そして、紆余曲折ありましたが、分解・清掃・修理?した後の現在は、
一応ライカらしいシャッター感(&シャッター音)で機能しています。
動画で示します。右から、IIf・IIIf(今回修理)・IIIgです。
最初は1/25秒(IIIgは1/30秒)の場合。

次は1/100秒(IIIgは1/125秒)の場合。

私が手がけた"IIIf"も、プロが整備した"IIf・IIIg"に近い音がしているでしょう?

続く

ライカの低速シャッター2016年06月07日

前回)からの続きです。

"ライカIIIf"には低速シャッター用の別ダイアルがあります。
ライカの一秒シャッター
使用するときは、高速用ダイアルを1/25秒に合わせた上で、
この低速用を右に回して、1/15秒または1/10秒、
左に回して、1/5秒、1/2秒または1秒に合わせます。
この面倒な仕様を現役で体験している人は、
もうほとんど生存していないでしょう。
だからこそ、今更フィルムカメラを使うなら、この二軸式ダイアルも面白いです。
いわゆる「カメラの歴史」を学ぶという感じですね。
今回の分解で、この低速シャッターのメカニズムを勉強してみると、
ほとんど職人技というか手作り感満載でした。

低速シャッターの速度を司るのは、基本的にスローガバナーです。
(これはその後の数十年間、電子式シャッターが生まれるまで不変でした)
スローガバナー
そして、低速ダイアルとガバナーは、複雑な機構で連動していました。
03
この写真の前シャーシを外して裏側を見てみると、
次のように、縦長の「ロッド」と真鍮削りだしの「突起」が見えます。
04
突起はダイアルと同軸になっていますが、
中心から外周部までの距離が変化しているので、
ダイアルを回すと、突起と接するロッドは左右に振れます。
そしてロッドの先端の動きは、次のガバナーのレバーに伝わります。
05
レバーが右にあるときはガバナーの抵抗は重く、左にあると軽くなります。
また、「突起」の先端は波打っているので、
この先端で抑え込まれる「スロー連動棒」は、
ダイアルのセット位置によって少しずつ前後し、
ガバナーから動作制限を受ける度合いが変化します。
そして、この連動棒が、
最終的にシャッターの後幕が走り出すタイミングを決めるので、
これらが総合的に関係して、1/25秒〜1秒の低速シャッターが実現します。

と文章にしても全く解説になっていませんね。
まあ、こんな感じの綱渡りのような工夫で実現されている低速なので、
ライカの中古品には、この低速シャッターが機能していないものがあります。
再組み立てしてシャッターが甦ったはずの当機もそうでした。
ただ私の場合は、整備不良というよりも、
とんでもないポカをやっていた事が原因でした。

それは良くあるミスらしいです。
ガバナーを取り出してベンジン浴をしている間に
ぜんまいバネが外れてしまっていたのです。
06
このように教科書でも注意を促されていたのに!!
やはり、教科書は謙虚な心で良く読むべきですね。
このミスに気づいて、ぜんまいバネの位置を修正した後は、
低速シャッターもそれなりの速度で切れるようになりました。

1秒にセットして動画に撮りました。

それでも、ちょっと長く1.3秒くらいになってますね。

実は、この動画の後、
もう一度ガバナーをベンジンで洗い、教科書の教えに従って、
ベンジンで希釈した精密油をほんの少し歯車軸にさしたら、
かなり1秒に近くなりました。
教科書ってたいせつです。

続く