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理想の二眼レフを探して2:マミヤ二眼シャッター整備 ― 2019年02月21日
(前回)からの続きです。
羽根と羽根の召し合わせ部に油膜が付着しています。
このせいで、シャッターが切れたり切れなかったりするのですね。
大関通夫氏の『カメラの修理&メンテナンス』を教科書にして清掃します。
MamiyaのSEKORレンズはメンテナンス性に優れています。
前玉群をブロックごと取り外すと、シャッター羽根が露出します。
羽根の隙間に入る程度、ベンジンを僅かに滴らし、
油汚れが溶け込んだベンジンを、綿棒で優しく拭き取っていきます。
これを5〜6回繰り返し、最後はレンズクリーニングペーパーで拭き取ります。
乾燥後、ブロワーを吹いてみて羽根が軽く震えるようになったら完了です。
そしてシャッター羽根も新品のようになり、
理想の二眼レフを探して3:プリモJRシャッター整備 ― 2019年02月24日
(前回)からの続きです。
修理を必要としている二眼レフのうち、
私が次に取り組んだのは、写真で一番右の " プリモ Primo-JR " です。
ある深謀遠慮のもとに入手したジャンクカメラなんです。
Primo-JRのOEM機である " ソーヤーズマーク4 Sawyer's MARK IV "
を含めれば、この機種の入手は何と三台目です。
「いい加減にしたら」の声が自分自身の中からも聞こえてきます。
最初にジャンク度判定をしたところ、
大きなところではレンズシャッター不良が一番の問題点でした。
この機種はセミオートマットなので、
・フィルム巻き上げ&シャッターチャージ
↓
・シャッターボタン押し下げ
↓
・シャッター羽根の開閉(露光)
↓
・フィルム巻き上げ&シャッターチャージに戻る
のサイクルで二重露光のミスを防いでいます。
ところが、かなりの頻度で羽根が動かず、
シャッターが切れないことがありました。
ということは、次の操作に進めませんから、
巻き上げ機構を再度チェックしてみようと思っても、
その操作に移れないわけです。
ひどい時は、シャッターボタンを押しても、
全然作動する気配を見せないので、やむを得ず買い物に出かけ、
一時間後に戻ってきたらシャッターが切れていた、
というような状況でした。
それでも、一応シャッターが切れることは切れるわけですから、
不調の原因で一番可能性が高そうなのは、羽根かギア類の油汚れです。
まず、前回のマミヤC220と同じように、
ベンジンによる羽根の清掃を試みる事にしました。
以前、この機種のレンズ清掃をした時は、
前玉の押さえリングを外すのに苦労しました。
今回は、逆に押さえリングと前玉一枚だけがすんなり外れて、
むしろ前玉群の残りの部品が取り出せない状態になりました。
堀割り溝もないし、掴みようがないので回せません。
そこで吸盤ゴムオープナーの出番ですね。
径の合うゴムを押し当てて、かなり力を入れて、何とか回せました。
そして前玉の残りを取り出したところが次の写真です。
このように、同じ機種の同じレンズの分解方法についても、
正解は一律ではありません。
そのたびに解を見出して実施しなければ次の工程に進めないのです。
カメラの修理を手がけていると、こうして状況対応力が磨かれ、
人間としても大きく成長できます(笑)。
ともあれ前回のマミヤC220と同様に羽根の清掃をしたところ、
シャッターの調子は良くなったようです。
「完全分解してベンジン浴」も覚悟していましたが、
今の所は、これで様子見です。
ちなみに、ベンジン浴の経験は次の通りです。
この二眼レフ、シャッターが一応正常に動くようになったので、
それ以外の点もチェックしてみました。
致命的な問題はなさそうですが、後玉に何がしかあります。
理想の二眼レフを探して4:ブリキ細工の二眼レフ ― 2019年02月25日
(前回)からの続きです。
中古カメラ市場には一つの法則性があることが分かりました。
「爆発的に売れるほど人気のあったカメラは、中古市場では見向きもされない」
ということです。
なぜなら、一番大切な『希少性』が無いからなんですね。
その代表例の一つが、次の写真の中央、
" リコーフレックス RICOHFLEX " です。
私の修理を待っている3台の二眼レフの最後です。
カメラ好きの私にしては、不覚ながら、
つい先日までRICOHFLEXシリーズの存在を知りませんでした。
ところが、何かの拍子で眼にして、
私好みのフォルムに惹かれてしまったのです。
このシリーズには10種類以上のバージョンが存在しますが、
その特徴は、メーカー自身による次の説明図で明快です。
ブリキ細工のユニットが、わずか8本のビスで組み立てられる構造です。
またピント合わせも実に単純な機構です。
ヘリコイド方式の上下二本のレンズを、むき出しのギアで連動させるだけです。
こんな状況。
ブリキ細工というチープな素材と、このメカニカルな外観が、
何とも言えない雰囲気ですね。
今回入手した個体は " リコーフレックス RICOHFLEX VII s " です。
一応このシリーズの頂点にある機種だそうですが、
1955年に発売された当時の定価は、何と「ケース込みで 8,300円」。
カメラが高級品であった時代に、人気になって当然ですね。
一方、最初の写真で左に写っているマミヤ Mamiya C220、
私が入手した1976年頃の定価は、「80mm f2.8付きで、53,000円」です。
20年ほどの時代差があるとはいえ、RICOHFLEXの6倍以上の値段です。
ここで私の記憶を40年ほど遡ってみると、
二眼レフの購入動機は「中判フィルムを使ってみたい」でした。
そして、マミヤC220を選んだ理由は、一番安かったからです。
中判フィルムカメラの他の選択肢と言ったら、
・ハッセルブラッド
・ゼンザブロニカ
・ローライフレックス
など超高級機ばかりで、まさに問題外の外ですね。
また、マミヤ以外の国産二眼レフは既に廃れて、製造されていませんでした。
一般人にとって、もうブローニーフィルムを使う二眼レフの時代は終り、
機動性のある35mmフィルムカメラの時代になっていたのですね。
私自身も、ミノルタSR-7、後にニコンF2を普段は使っていました。
そこで仮定の話ですが、1970年代の半ばに、
もし私が中古カメラ店を訪れていたら、
そこでは店の片隅に「リコーフレックス RICOHFLEX」が、
二束三文というよりも「欲しけりゃタダであげるよ」状態で、
打ち捨てられていたはずです。
マミヤC220と比較すると、
・使うフィルムは同じ、
・サイズは小さく重量も半分、
・しかもタダ同然の価格、
そんなリコーフレックスこそ、
実は私にとってベストの選択だったはずです。
でも「カメラはカメラ屋さんで新品を買うもの」、
という固定観念に捕らわれていた私は、
" マミヤ Mamiya C220 " を選び、
ついに43年間連れ添って、
今では愛着を感じるまでになってしまいました。
と、そんなわけで、出会い損ない、買い損なったリコーフレックス、
43年後の今年、遅ればせながら買ってみましたよ。
現在オークションなどで売られている個体は、すべてボロボロです。
みんな汚れ・錆び・カビにまみれてゴミ同然、
というよりもゴミそのものです。
その中では、「ややマシかな?」と思われる個体を買いました。
でも当然「ジャンク品」、壊れていることが前提です。
まず、雑巾で汚れを落とし、アルコールで消毒し、
ベランダに数日置きっ放しにしてカビ臭さを低減させました。
それから手にとって動作チェックしたところ、
思いがけずシャッターはそこそこ切れました。
ただしシャッターレリーズレバーが不良でした。
次の写真で一番手前に写っているレバーです。
以下の写真でチェック手順を説明します。
チャージレバーを押し下げてシャッターをチャージした時の、
レリーズレバーの位置がここです。
そして、レリーズレバーを押し上げて、シャッターを切ったところ。
この後、レリーズレバーは元の位置に戻るはずですが、
戻らないので、手動で引き戻さなければなりませんでした。
いちいちこの操作をするのは煩わしいです。
それに、何か大きな問題が潜んでいる証拠かも知れません、
と疑ってみましたが、実は簡単に治ってしまいました。
原因は、シャッターレリーズレバーが少し歪んでいたことで、
すぐ下の台座部分に接触して、動きが阻害されていたのでした。
この写真のように、レバーを「エイ!」と赤矢印の方に曲げて歪みを直し、
真っ平らにしてあげたら、何の問題もなくなりました。
レンズの玉も若干の汚れ・傷・クモリ・カビがあるものの、
致命的なダメージはなさそうでした。
あとはメカニカルな部分を手入れすれば何とかなるかも知れません。
それは「別記事」にまとめる予定です。
うまくいったら、(私の愛機となるはずだった)このRICOHFLEXを抱えて、
「ヴィヴィアン・マイヤー」の真似事ができるでしょう。
(終り)























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