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『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』を探して2019年02月10日

ドキュメンタリー映画「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」(2013年)
を観てみようと思ってからずいぶん経ってしまいました。
昨年末にちょっと暇ができたので、TSUTAYAの在庫検索をしてみたところ、
池袋から高田馬場周辺で在庫があるのは、東池袋のTSUTAYAだけでした。
そこで散歩がてら借りに行ったのです。
ところが見つかりません。
店内の機械で検索すると、ドキュメンタリーの棚にあるはずでした。
店員さんと一緒にくまなく探したのに、ついに見つけられませんでした。
たまにそんなことがあるらしいです。
この時は断念。
そして、今年になってから、面倒なことをやめてAmazonに発注し、
DVDと三枚のポストカードがやって来ました。
ヴィヴィアン・マイヤー
予想通り、とても面白い映画でした。

あらすじは、DVDケースに次のように記されています。
「奇跡は、ある若者がわずか380ドルで落札したネガ・フィルムの詰まった箱を手に入れたことから始まった。2007年、シカゴ在住の青年ジョン・マルーフがオークションで大量の古い写真のネガを手に入れた。その一部をブログにアップしたところ、熱狂的な賛辞が次から次へと寄せられた。この奇跡を世界の主要メディアが絶賛。発売された写真集は全米売上No.1を記録、NY・パリ・ロンドンでいち早く展覧会が開かれるや人々が押し寄せた。撮影者の名はヴィヴィアン・マイヤー。すでに故人で、職業は元ナニー(乳母)。15万枚以上の作品を残しながら、生前一枚も公表することがなかった。ナニーをしていた女性が、なぜこれほど優れた写真を撮れたのか?なぜ誰にも作品を見せなかったのか?」

ね、ちょっと面白そうでしょう?
額面通りに受け取れば、この映画は、
「アーティスト発掘のドキュメンタリー」です。
でも、私はこれを「恋愛映画」のようだ、と思って観ました。
シカゴ在住の青年ジョンと、
既に故人となった写真家ヴィヴィアンの魂との恋愛です。
そう思って観ると、恋愛物語と写真関係のいろいろな要素が、
さまざまに深く絡み合っているような気がするんです。

■出会い
ジョンとヴィヴィアン(の作品)が出会ったのは、
「スキヤバシ」ならぬ「スキャナー」のガラスの上です。
そのスキャナーの名前は、" EPSON GT-X970 "。
私の使っているスキャナーと同じでした!
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ジョンはここで、ヴィヴィアンを発見するのです。

■相手を知りたいという欲求
恋愛の始まりは、相手のことを知りたいと思う気持ちです。
最初に入手したヴィヴィアンの作品の魅力に取り憑かれたジョンは、
彼女の撮影したネガだけでなく、未現像のフィルムや遺品の数々を、
八方手を尽くして、部屋いっぱいになるくらい収集しました。
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こうして彼女の遺物をたくさん集めることができても、
まだ人物像は謎のままでした。

■彼女のルーツの探求
好きになった相手がどんな人間なのか、普通は知りたくなりますよね。
ジョンは系図学者の力を借りて、
彼女のルーツがフランスにあることを突き止めます。
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でも、フランスのどこかは不明。
それで、フランスに旅行した時の彼女の写真から、
撮影場所の特定を試みる。(私も良くやる場所探しゲーム)
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フランス旅行時の写真に写っている教会の尖塔に注目し、
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ネットで画像検索をする。
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そしてフランスの田舎の街を発見するんです。
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■衝動的な行動
ジョンは、もっとヴィヴィアンについて知りたいという欲求から、
彼女のルーツである街に飛んでいってしまう。
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この衝動性は、一歩間違えば「ストーカー」になってしまいますね。
ジョンは幸運にも、その街で彼女の親戚に出会い、
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その親戚が見せてくれたのは、
ヴィヴィアンの母親が所有していたボックスカメラでした。
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写真好きは母親から受け継いだものだったんですね。
そのボックスカメラで撮った母子像も残っていました。
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右の無愛想な少女がヴィヴィアン、中央がその母シルヴァンです。

■献身
恋愛の一要素は、相手に献身的に尽くすことです。
膨大なネガから作品を選び、プリントに仕立てる作業は、
とてつもない労力を必要とします。
ジョンは、ヴィヴィアンのネガの作品化に美術館等の協力を求めましたが、
丁重に拒否されてしまいました。
そこで、自ら作業することを決断します。
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そして、展示会の開催にこぎ着けます。
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ジョンの熱意の源は、
写真家としてのヴィヴィアンを世界に知らしめたい、
と望む献身的な心でした。
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■所有カメラ
映画の中では彼女のセルフポートレイトが何枚も紹介されます。
私のようなカメラ好きがそれを見ると、
ヴィヴィアンの容姿だけでなく、
彼女が抱えている「カメラ」に目がいきます。
例示すると、
・ローライフレックス(ちなみに、私もベビーローライ持ってます!)
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・銀と黒のバルナックライカ(私も銀のバルナックライカ持ってます!)
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1950年代から60年代の写真と思われますが、
当時このカメラを所有し、
かつ大量のフィルムを現像に出していたとすると、
乳母としての給料は全て「カメラと写真」に注ぎ込んでいたのでしょう。
それでも写真家としては、一枚の作品も発表しなかったって不思議です。

■恋の不安
「自分の好意は逆に迷惑がられてはいまいか?」という不安は、
恋愛状態にある全ての人に共通するものらしいです。
(私は経験がないのでわかりません)
ヴィヴィアン・マイヤーの名を世界に広めることに成功したジョンにも、
それと似た気持ちがありました。
「彼女は自分の作品を公開したくなかったのでは?」という説を唱える人もあり、
ジョン自身も、その思いを払拭できていませんでした。
しかし、彼女のルーツであるフランスの田舎町で写真展を開くことになり、
そこを訪れたジョンは、その町に彼女が馴染みの写真店があり、
そこに残っていた手紙を発見します。
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それは、彼女が作品の発表を目指して、
当時暮らしていたアメリカから、そのフランスの写真店に宛てて、
自分の写真のプリントを依頼する手紙でした。
「あなた達が素晴らしい技術を持っていることを私は知っています。
遠く離れているけど一緒に仕事をしませんか?
私が注文の多い人間であることは既にご存知でしょうが、
ぜひ、プリントをお願いしたいのです。
撮影したカメラはローライフレックスです。」と書かれていました。
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一緒の仕事は、結局実現することはありませんでしたが、
この手紙により、彼女が自作品の発表を企図していたこと、
また、自分の写真の優秀さに気付いていたことが明らかになりました。
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そして、「彼女の夢を、今、僕らがかなえている」
ジョンの行為はヴィヴィアンにとって迷惑であるどころか、
むしろ彼女の意に沿ったものであることを知り、ジョンも安堵したのです。
めでたし、めでたし。

■結局ヴィヴィアン・マイヤーは何者なのか?
母親から受け継いだ「写真」好きを突き詰めて、
乳母としての給料をすべてそれに注ぎ込み、独身を貫き、
晩年は困窮した偏屈な女として、
公園の片隅のベンチで一日を過ごす生活。
過去に乳母としてのヴィヴィアンから世話を受けた人達が、
後年、映画の中でインタビューに答えていますが、
そこで明らかにされるのは、彼女の特異な性格と、
偏執狂的な数々の振る舞いを伝えるエピソードです。
残された多くのセルフポートレートの表情からも、
彼女の偏った性格が読み取れるような気がします。
孤高の芸術家とはそういうものなのか、と思いながら、
でも次の一枚を見ると別な考えも浮かびます。
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これは、ニューヨークで乳母をしていた時代に、
避暑地で過ごす一家に乳母として同行した彼女です。
海辺で水着姿の彼女は、くつろいで少しばかり微笑んでいるように見えます。
やや月並みな表現ながら、
「偏屈な彼女にも、こんな女らしい魅力的な一面があったのか」
と思っちゃいます。

そして、そんな魅力的な女性としての「心」と、
自分の作品を発表できなかったという「悔い」が、
彼女の死後、何か超現実的な世界を通じて、青年ジョンのもとに届き、
彼に「恋愛」にも似た一連の行動を起こさせたのではないでしょうか。

実は、これに似た体験を私もしたことがあります。
(取るに足りない体験ではありますが)
既に7年前のことになります。
新緑の少女裸像」というブログ記事を書きました。
その記事にコメントしてくださった「ようこさん」とのやりとりで、
私が図らずも少女裸像の作者の「渡辺弘行」さん(故人)と、
その孫娘である「ようこさん」の間の橋渡し役を担ったことを知りました。
「芸術家のような心の強い人は、死後もその思いが現世の人間に届く」
というのが私の仮説です。

私の超現象体験について、そういえば次のようなこともありました。
お墓参りで大事なこと
この4年前のブログ記事に書いた通り、
何万個のお墓の中から、会ったこともない叔母様のお墓を見つけた話です。

まあ、そんな超現実など信じずに、
「世の中には偶然ってあるんだね」で済ませても良いのですが、
超現象の世界っていうのも悪い考えではないですよね。

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