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ミノルタ16のシャッター修理2015年08月06日

ミノルタ16の分解修理清掃の続きです。

前回手掛けた"ミノルタ Minolta 16"のメンテナンス作業は
レンズのクリーニングと遮光モルトの交換がメインでした。
今回扱う個体は同じミノルタ16でもシャッターに不具合がありました。
ミノルタ16のシャッター修理
このように、1/25秒のスピードでは、シャッターが開きっ放しになります。
ただし、1/50及び1/100では大丈夫そうなので、修理不能な欠陥ではなさそうです。
それで当機種のシャッター機構の勉強も兼ねて分解することにしました。

途中までは前回の「分解修理清掃」と同じ手順です。
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この後が違います。
今回はシャッター修理が目的なので、
次の写真のようにメカ部分をそっくりケースから取出しました。
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そして、メカの半分は次のボディ本体とレンズユニット。
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これについては前回と全く同じ要領でメンテナンスします。

その片割れのシャッターユニットが次の写真です。
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これは表側から見たところですが、手前がシャッターカバー、
その奥がシャッター羽根とシャッターベース(仮称)です。
シャッターをチャージした状態は、次のようになります。
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シャッターカバーの窓の中心に青い丸が見えています。
この丸は撮影準備が整っていることを示すもので、
"ミノックスMinox"の「ブルーサークル」と同じシステムですね。
シャッター羽根の開口は、撮影後は白点線の位置に移動します。
つまり、羽根の開口とカバーの窓が重なった時が、
シャッターが「開いている」瞬間となります。
この状態で裏から見たのが次です。
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シャッター羽根の部品の幾つかが、シャッターベースの穴を通して
こちら側に出てきています。この写真に黒文字で示した次の三つです。
仮に名前を付けました。
・シャッター爪
・スプリング爪
・速度調整ピン
この写真は、シャッターがチャージされた状態ですので、
「引張りばね」が十分に伸びて、シャッター羽根を引っ張る準備ができています。
シャッターボタンを押すと、ストッパーが下がりシャッター爪との連動が外れます。
フリーになったシャッター羽根は引張りばねの力で左方向へ移動します。
シャッターを切り終わった状態が次の写真です。
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「引張りばね」は縮み、「速度調整ピン」が端部まで移動していますね。
これがキーポイントです。
蛇足ながらここに「ちぎれ掛かった」金属板が写っています。
シンクロ接点用の部品と思われますが、どうせフラッシュは必要ないので、
引きちぎって取ってしまいます。(かなりいいかげん)
この金属板の正しい位置と形状は前回の「分解修理清掃」時の次の写真で分かります。
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さて、お話戻って、シャッター(スピード設定)ダイアルを回すと、
シャッター機構のどの部品がどう変化するのかを見てみます。
関係する主要部品は次のものです。
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「シャッターダイアル」を回すと「カム位置調整爪」が左右に動きます。

具体的に設定速度ごとの状態で説明します。
まず次の写真は、1/200に設定した状態です。
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「カム」は「はずみ車」とシャッターベースの間にありますが、
「カム位置調整爪」に押されてはずみ車の裏側に沈んでいます。
そのため、「速度調整ピン」の左方への移動を邪魔しません。

次は1/50の状態。
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ここではカムがはずみ車からちょっと顔をのぞかせています。
カムはねじりばねの力により常に上方に向かおうとしていますから、
カム位置調整爪が右に動くと、それに連れて上方に出てくるのです。
そのため、速度調整ピンが最後の位置まで左方向へ移動するには、
ねじりばねの力に抗して、このカムを押しのけていく必要があります。
また、カムははずみ車(フライホイール)と連動していますので、
カムの上下運動ははずみ車の回転運動を伴います。
つまりカムは、はずみ車の慣性モーメントにより、
押しのけられるまでの時間を確保します。
この機構が、いわゆるスローガバナーの役割を果たしています。

次は1/25の状態。
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この状態ではカムはかなり上まで上がってきて、
速度調整ピンの行く手を阻んでいます。
ということは、シャッターが閉じるまでには、それなりの時間を要するわけです。

ミノルタ16はこういう仕組みで、
シャッタースピードを、1/200 → 1/50 → 1/25と変えることができるのでした。
今回の個体は、1/25にシャッターダイアルを合わせた時に、
ピンが進む力よりも、その行く手を阻む抵抗力の方が大きく、
ピンが途中で停止することが、シャッターが閉じ切らない原因でした。

その抵抗力を相対的に減じれば問題が解決するはずです。
それには以下の方法が考えられます。
1.シャッター羽根とカバー及びベースとの摩擦を少なくする(清掃する)
2.カムやホイールの軸部等の摩擦を少なくする(清掃する)
3.ねじりばねの形状を変えてばねの復元力を弱める(これは邪道か?)
今回はこの1〜3のすべてを実施することにより、問題は解決しました。

そして、別途清掃した次のボディ本体とともに、
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ケースに元のように納めます。
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カバーをすべて取付けて完成です。
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左の青が今回修理品。右の白が前回修理品。

この二つの個体のシャッターを切り比べてみると、
白は、1/200、1/50、1/25とも良さそうでした。
一方、青は、1/200、1/50は、ほぼ正常っぽいのに対して、
1/25の時はまだ少し遅く、体感的には1/15くらいの感じでした。
今回の分解修理の結果を自己採点すれば60点くらいでしょうか。