目白の風景、40年前と見比べると

人間も写真も上手にボケることが大切であると思うようになりました。全てに焦点を合わせることは煩わしいだけでなく、本当に大切なものを見えなくしてしまうからです。

この写真はボケ味の美しさで定評のあるレンズ”ニッコール105mm/f2.5”で28年前に撮影したものです。バックのボケ方がとても気に入ってます。

このレンズとの出会いはこんな次第でありました。
多くのカメラ好きがそうであったように、ニコンブランドに捕われた私は、ついに意を決し、清水の舞台から飛び降りるつもりで”NikonF2”と標準50mmレンズを手に入れました。
ボディの次には交換レンズですが、その選定方法に付いては
・望遠系は、標準の焦点距離を倍々にしていき
・広角系は、標準の焦点距離に0.7倍ずつを掛けていく
というのが教科書通りの正しい道でした。ズームレンズの良いものが無かった時代には、多くの画角をカバーするためには多くのレンズを必要としました。
標準を50mmとすると、実際にはこういう計算をします。
・100x2=200mm
・50x2=100mm
・50x1=50mm
・50x0.7=35mm
・35x0.7=24mm
ニコン神話に捕われていた私は、この後、四回も清水の舞台から飛び降りて、200、105、50、35、24mmの5本のレンズを抱える身分になりました。
そのうちの一本が”105mm”で、使っているうちに本当に惚れ込んでしまいましたが、これが伝説的な名玉と評価されるのを知ったのは、実はもっと後のことでした。

酔狂ながら今年からライカ式のレンジファインダーカメラを使うことになり、ニッコール105mmに代わる名玉を欲していました。そして多くの実作を参照し下した結論は、
・コシナ製、フォクトレンダーのアポランター90mm/f3.5 でした。

一眼レフと違いレンジファインダーの場合は、レンズ交換をして画角を変える度にビューファインダーも換えなければ正確な撮影範囲が分かりません。しかし私の手持ちのライカⅢgには標準の50mmと望遠の90mmに対応するブライトフレームがあらかじめ組み込まれているのでその必要がありません。下の四隅だけ表示されているのが90mmの撮影範囲です。

心は決まりました。でも物がありませんでした。丁度一年前に生産終了になっていたのです。実店舗やネットショップに問い合わせても在庫無しの返事ばかりでした。中古を探してヤフオクなどをウォッチしていても全然出てきません。
中古が出てこないのは、きっとこんな理由からだと推測されます。
1.大衆向けの商品ではないので絶対数が少ない。
2.買った人はみんな気に入って手放さない。
3.遺品整理で出ても良いのだが、このレンズを買うと何故か長生きする。

ほとんど諦めてしまった時、ふとヤフオクだけではなくワールドワイドに探してみたら、と思いつきました。そして名前だけ知っていた”eBay”のアカウントを不自由な英語と格闘しながら取得し、ついに、イギリスの出品者に行き着きました。
中古品ながら”mint condition”だそうです。ミントとは新品同様以上の状態を言います。

でも地球の裏側から来るので、到着まではしばらく日数を要します。我が家では４台のカメラが「アポ様」の到着をお待ちしています。このレンズはLマウントという古いライカ用のねじ込み式なので、新しいカメラに取り付けるには変換アダプターが必要です。

左から、
・ライカⅢg そのまま
・ライカⅡf そのまま
・Minolta CLE + L-Mアダプター
・PEN E-P3 + L-m4/3アダプター
みんな口を開けて待っています。

「イーベイでアポランター」を達成した私の次の目標は「イーベイでカラスコ」です。これも私の希望する条件の商品は国内では入手が難しいのです。
ボケとかアポとかスコとか、家族からは「なんじゃそれ？」と言われそうですが、通じなくても良いのです。