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お久しぶりのキャノネット2013年01月20日

かつて我家に「キャノネット」なるカメラがありました。
女房が彼女の母親(故人)から譲り受けたものです。
そのお義母さんは車も運転するハイカラな人だったので、50年ほど前、
このカメラで家族旅行の写真など撮っていたのだと思います。
女性が写真を撮るのはまだ珍しい時代だったでしょう。
その後お義母さんが、コンパクトなハーフサイズの「キャノンデミ」に買い替え、キャノネットは女房に廻って来たわけです。

しかし私は名機”Nikon F2”を持っていましたから、格下のキャノネットの出番はなく、
ある年の10月、質屋行きとなり、秋の天皇賞の馬券になってしまいました。
そして府中競馬場の直線に舞う紙吹雪となりました。
そんな事があって、それ以来「キャノネット」という文字を何かで見ると、
少しばかり罪悪感に捕われていたものです。

そんな私が又このカメラに巡り合いました。
何と、ヤフオクで400円でした。ジャンク品とはいえ当時の約1/50の価格です。
お久しぶりのキャノネット
ボディ正面の文字がかすれて、Canon ではなく 'anon になっていますが、アノンというのも可愛い名前ではないですか。

「やってみよう!カメラの修理&メンテナンス」という本にキャノネットが取り上げられていたので、これを教科書がわりにチャレンジしてみようと思ってヤフオクで探していたのです。

すったもんだしながらカメラを分解し、以下の手入れを施しました。
・遮光モルトの貼り換え
・レンズのクリーニング
・シャッター羽根の清掃
・ファインダーのカビ落とし
・距離計二重像の縦ズレ調整(下の写真)
距離計調整中

試しにカラ写しをしてみると、シャッター・絞りともOKのようでした。
ボディ下にあるフィルム送り用のトリガーを引くと、スプロケットも確実に回転します。
カビで曇っていたファインダーも下の写真のようにクリアになりました。
ブライトフレームの枠もしっかり見えています。
これなら気持ち良くピント合わせができそうです。
クリアなファインダ

早速、フジカラー100の24枚撮りを詰めて撮影に出かけました。
結構持ち重りがします。何と700g!もあるのです。
オリンパスのデジカメ E-P3が標準ズーム込みで480gだからその1.5倍です。
軽量=プラスチック=安物、重量=金属=高級という文化に馴染んだ私には、
この重さは何か有難味を感じさせます。

順調にシャッターを押し続け、「これは行けるじゃん」と思った途端、
14枚目でシャッターの響きと感触が消えてしまいました。
「やはり駄目か」とフィルムの残りを消化するつもりで空撃ちしていたら何とまた蘇生。
結局、途中はキセル状態で総計17枚撮影できました。

50歳を越えたキャノネットで写した写真、
現代の風景なのに、なぜか懐かしい味があります。
自転車のある庭

交差点

川沿いの道

神田川護岸

このカメラに関する若干の雑学を紹介します。
初代キャノネットは1961年(昭和36年)に発売された大衆機です。
十分な性能ながら二万円を切る価格だったため、爆発的に売れたそうです。
キャノンはこの販売によって莫大な利益を手にしましたが、一方それまでの「高級機メーカー」としてのイメージを喪失しました。
現代においてNikon神話があるのにCanon神話がないゆえんです。

ところで現代では「キャノネット(canonet)」と言えば「キャノンインターネットサービス」の事だそうです。
これは、様々なビジネスソリューションを顧客に提供するキャノンのネットサービスの事だそうですが、何とも味気ない言葉になったものです。
アントワープ(ベルギー)でネットに繋がったって、誰も「アントワネット」とは呼ばないヨ。